この八月までに、イワノフ・ロシア国防相は、軍参謀本部直属の諜報機関(GRU)の十二部局の長のうち、六人を相次いで入れ替えた。後任はいずれもイワノフ国防相がかつて所属した海外情報局(SVR)の出身者である。また、ロシア国内では、エリツィン時代からの生き残り組であるコレベルニコフ現GRU長官の交代も時間の問題との観測が高まっており、後任候補としては、やはりSVR出身のチェルノフ現安全保障会議副書記の名が取り沙汰されている。 今年三月、プーチン・ロシア大統領によって国防相に任命されたイワノフ氏は、プーチン氏の側近中の側近といわれる。以来、イワノフ氏は、積年の課題である軍改革の断行に強権的なリーダーシップを発揮してきている。 ロシアの二大対外諜報機関といわれるSVRとGRUだが、軍参謀本部直属であるGRUの主要ポストへ、大統領直属であるSVR出身者を相次いで登用することは、SVRによるGRUの事実上の統合を意味する。今回の人事は、プーチン大統領が側近イワノフ氏を通じて、軍の中枢部門を確実に掌握しつつあることの証左ともいえよう。

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