七月のある日、大阪城公園を望むホテルのレストランで二人の男がランチを共にしていた。厚生労働大臣・坂口力と、後発医薬品メーカーで組織する医薬工業協議会の常務理事で沢井製薬社長の澤井弘行だった。澤井は、事前に用意した何枚かのシートを手に「医療の構造改革には後発医薬品の活用が不可欠だ」と訴えた。その後も、財務省や経済産業省の担当者が相次いで澤井のもとを訪れた。「大学病院の勤務医の中にすら後発医薬品を知らない人がいますし、一般の人となると、そんな薬が存在すること自体が不思議かもしれませんね」 澤井はちょっと自嘲気味に話す。 後発医薬品。ジェネリック医薬品ともいう。特許の切れた医薬品である。通常、新薬の特許期間は二〇年から二五年で、その間は開発メーカーが独占的に製造・販売できる。しかし特許が切れれば公共財となり、同じ医薬品を作ることができる。新薬を先発医薬品とも呼ぶので後発医薬品といわれ、ジェネリックとは、原意が「成分」なので「成分が同じ医薬品」という意味だ。 後発医薬品は価格が安いのが特徴だ。開発費用が少ないからだ。新薬開発では一五年程度の時間と二〇〇億円規模の費用がかかるのに対して、後発医薬品は三―四年の期間と数千万円の費用でできる。そのため医療用医薬品としての薬価も新薬の四割から八割に設定されている。

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