「江沢民引退」の流れを阻むもの

執筆者:藤田洋毅2001年9月号

指導部の交代が予想される党大会開催を一年後に控え、中南海の動きが活発化している。はたして江沢民は全面引退するのか、しないのか。カギは李鵬の処遇にある。 今年の「北戴河会議」は、ここ数年で最も大きな関心を集めた。毎夏、中国共産党の高級幹部が河北省の海浜のリゾート・北戴河で繰り広げる党中央工作会議などの重要会議だ。江沢民総書記は、党中央軍事委のもつ別荘「遼養院」に陣取り、かつての毛沢東やトウ小平のように「どんな天気でも毎日、水泳して」(ニューヨークタイムズとの会見での発言)、健康を誇示したばかりでなく、折々に「ある一言」を口にした。 党中央の幹部はいう。「江がことさらに強調した一言を皆が意味深長に受け止め、党内の雰囲気は微妙に変化しつつあります」。来秋に予定される第十六回党大会を控え、指導部の思惑を知りたい多くの幹部は、江の「我が党の路線・方針・政策は確定しており、不変である」との発言に注目した。党の宣伝では常套句だが、今年は重みが違う。幹部らは、来秋に発足する新たな最高指導部のありようについて江が示唆したものと解釈しているからだ。 来秋の人事をめぐっては、(1)江の全面引退、(2)江の半分引退、(3)江・李鵬体制の継続――の三つの可能性が指摘されてきた。従来は、江が総書記・国家主席は胡錦濤政治局常務委員・国家副主席に譲るが、党中央軍事委主席のポストは手放さず、トウ小平型の院政を敷く(2)の可能性が最も高いと見られていた。しかし北戴河会議をへた今は、(1)の可能性が膨らみつつあるという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。