日本版REIT市場を開設せよ

執筆者:船木春仁2001年9月号

公正な市場ルールを目指した東証マンの挑戦 証券取引審議会総合部会座長として日本版ビッグバンのシナリオづくりに携わった蝋山昌一大阪大学教授(現・国立高岡短期大学長)は、かつてビッグバンの狙いを次のように語った。「一千四百兆円に達する個人金融資産を、証券市場をはじめとする多様な市場に呼び込むことで、銀行の間接金融に過度に依存した日本の金融構造を是正し、第二、第三の柱を作ることで金融不安の発生を抑え、解消を図る」 その蝋山が、最も心血を注いだのが不動産市場に個人資産を流入させることだった。それは不良債権の処理を促し、不透明感の強い不動産流通の構造変革を促すものでもあった。そのためにSPC法(資産流動化法)などのいくつかのビジョンを提示し、またいくつかは実現した。 しかし、真の意味で不動産市場へ個人資産を呼び込む制度が、審議会の議論開始から五年を経てやっとスタートする。日本版不動産投資信託(J-REIT=Japan Real Estate Investment Trust)の登場だ。 九月十日、東京証券取引所に日本での第一号となるJ-REIT二本が上場され、取引が始まった。投信といっても一般の投信とは違い、ファンドを組成している投資法人が企業の株式にあたる投資証券を発行して売買する。九月三日に決まった公募価格は、三井不動産系の日本ビルファンド投資法人が一口六二万五〇〇〇円、三菱地所系のジャパンリアルエステイト投資法人が五二万五〇〇〇円。投資法人は、賃貸収入などの運用益を投資家に配当する。この発行価格では配当利回りは年四%程度になる見込みだ。

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