政界に転身したスポーツ・セレブリティ

執筆者:生島淳2001年9月号

 洋の東西を問わず、スポーツ・セレブリティは、政界転身の誘惑に晒される。アメリカでは、多数派を巡って議会で拮抗する民主・共和両党にとって知名度抜群のスポーツ・セレブは垂涎の的だ。 過去の有名人だとジェラルド・フォード大統領。ミシガン大でフットボールの全米大学最優秀選手であり、大統領専用機エアフォース・ワンから降りるとミシガン大の応援歌が演奏されたりした。 昨年の大統領選挙では、プリンストン大バスケットボール部を全国ベスト4に導き、その後ローズ奨学生となってオックスフォードに学び、帰国後ニューヨーク・ニックスの選手としてNBAチャンピオンのメンバーになったビル・ブラッドリーが、民主党の大統領候補指名争いに加わった。 アメリカン・スポーツの観客席を見ていると、「××を大統領に!」というプラカードが目立つが、この標語、さして現実離れしていないことがわかる。 そして今年、キャピトルヒルの一年生下院議員になったのは、共和党のトム・オズボーン氏、六十四歳。九七年のシーズンまでネブラスカ大フットボール部のヘッドコーチを務め、三度の全国制覇を達成した名コーチだ。 彼は九八年にフットボールの世界から引退すると、他校からの熱心な誘いを断り、昨年の下院議員選挙にネブラスカ州第三区から出馬、何と八二%の票を獲得して当選した。総資産が約一千億円と発表されているオズボーン氏は(大学のコーチとはかくもお金になる仕事である)、議員として残りの人生を送ることになったのである。

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