情報通信社会に不可欠なインフラである大容量高速ネットワーク網。IT戦略本部が策定した「e-Japan計画」でも、「五年以内に少なくとも三〇〇〇万世帯が高速インターネット網に、また一〇〇〇万世帯が超高速インターネット網に常時接続可能な環境を整備する」としている。その核となるのが光ファイバーケーブルだ。すでに東京都心部などでは、一般家庭に直接光ファイバーを接続するFTTH(ファイバー・ツー・ザ・ホーム)サービスが始まっている。 光ファイバーによって大容量の情報を高速で長距離伝送する。この技術の可能性を理論的に証明して情報通信社会の扉を開いたのは一人の日本人科学者であった。名前を長谷川晃という。 彼の専門はプラズマ物理学であり、通信工学ではなかった。大容量長距離伝送の可能性を立証した論文も発表当初は無視され、彼自身も専門外のこと故、そのことを気にもとめていなかった。そんな呑気な出来事の中に未来に向かう画期的な扉が隠されていた。悲観論をうち破る もう少し詳しく説明しよう。 ガラスに光を通して情報を送受信しようというアイデアは、実は一九三〇年代に日本人によって提唱されたといわれている。そして後に東北大学学長を務める西沢潤一が光通信の基本的な三要素である半導体レーザー、光ファイバー、受光素子の三つを六四年に考案して光通信は現実のものとなる。

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