そして彼らは「戦場」に赴く

執筆者:生島淳2001年10月号

 テロ事件が発生した時、ロサンゼルスに滞在していた。時間の経過と共に東海岸のメディアは、深刻さが増していった。 スポーツ専門チャンネルのESPNさえ、一時は提携先のABCニュースを流したくらいで、ひと段落すると、メジャーリーグをはじめ、多くのゲームが延期、そして中止となるのをテロップで流し続けた。アメリカからスポーツが消えた。 カレッジ・フットボールはシーズン序盤の山場を迎えていた。多くの学校がとりあえず、延期の措置を取った。しかしいち早く事件直後の週末のゲームをすべて取りやめた学校があった。陸軍士官学校と海軍士官学校である。 この素早い決定をテレビで知り、ある本のことを思い出した。ジョン・フェインスタインの“A Civil War”(Little, Brown)である。彼の作品で翻訳が出版されているものには『苦悩の散歩道』(小池書院)など、ゴルフを題材にしたものが多いが、“A Civil War”は陸軍士官学校と海軍士官学校の「校技」とも言えるフットボールのライバル関係について書かれた本である。 何せ、この両校の敵愾心たるや、すさまじい。他の試合はすべて負けても、この相手にさえ勝てば「いいシーズンだった」と呼ばれるほど、大きな意味を持っている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。