十一月十日夜、中国の世界貿易機関(WTO)加盟決定を、中国中央テレビ(CCTV)は、カタールのドーハから生中継で伝えた。四時間半の特別番組が組まれ、「五輪招致、サッカー・ワールドカップ(W杯)出場決定と合わせ、今年の三大快挙」と繰り返し強調される。しかし北京市民は冷淡で、週末の夜はいつもより静まり返っているようにみえた。 七月に二〇〇八年夏季五輪の北京招致が決まったときは、市内中で花火や爆竹が鳴り、市民が深夜の中心街に繰り出した。十月の二〇〇二年W杯本大会の切符獲得のときも、五輪決定時には及ばなかったが、お祭り騒ぎは朝まで続いた。それに比べ、「入世」(WTO加盟を指す略語)が興奮を呼ばないのは仕方ない。 知識がないということではない。「入世」の夜、乗ったタクシーの運転手は「要するに金持ちがもっと金をもうけようってことだな」と言った。北京、上海など五都市で行なわれた世論調査では、六割強が「自分たちに有利」と答えたが、その比率は高収入、高学歴の人ほど高く、年齢が高くなるほど低くなる。「入世」の得失を、国民は感じ取っている。 CCTVの特番に出演したある大学教授は「入世の歴史的意味は、十年後、二十年後に分かることになるだろう」と話した。一九七〇年代末、トウ小平の提唱で改革・開放が始まったとき、それが中国と社会主義にこれほどの巨大な変化をもたらすとはだれも予想できなかった。今、それと同じような歴史的な転換点にあるともいえる。

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