キムチが結ぶ日韓首脳の絆

執筆者:西川恵2001年11月号

 小泉首相は十月十五日、韓国を日帰り訪問した。教科書、靖国問題、さらには北方四島沖のサンマ漁をめぐり、こじれきった日韓関係を軌道に戻すのが目的だったが、二十日から上海で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会合を目前に控え、ギリギリのタイミングでの訪問となった。 APECでは韓国の金大中大統領と同席することになるため、その前に関係を正常化する必要があった。さもないと小泉首相は、初顔合わせとなる金大中大統領と、握手も話もできないということになり兼ねなかった。ただ両首脳の忙しい日程から、小泉首相が朝六時すぎに羽田空港を発ち、午後五時半には戻るという、ソウル滞在実質七時間の駆け足訪問になった。 青瓦台(韓国大統領府)で行なわれた首脳会談で、小泉首相は未来志向の関係再構築を強調し、金大中大統領も同意した。首相は会談前、日本の首相として初めて、植民地時代に抗日運動家が多数投獄された刑務所跡地に作られた西大門独立公園を訪れ、「日本が韓国国民に多大な損害と苦痛を与えたことを心から反省とおわびの気持ちをもって見学した」と記者団に述べた。金大中大統領は首脳会談で「この発言を高く評価する」と語った。

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