さらばヤンキース

執筆者:生島淳2001年11月号

 ミュージカルの傑作に「くたばれ!ヤンキース」があるが、日本人でさえも、ヤンキースを嫌うのには大して時間はかからない。 ヤンキー・スタジアムに行って御覧なさい。もぎりにはじまって、ポップコーンの売り子までが傲慢、みんな威張っている。もちろんファンも。「ヤンキースの誇り」たるや、すさまじい。 しかし白状すれば、今季のワールドシリーズで惜敗したヤンキースを嫌うのは、かなりむずかしかった。二夜連続の九回二死からの逆転劇。テロ事件というサブプロットも完璧で、いかなるアンチ・ヤンキース・ファンも「今季ばかりは許してやるか」、そんな気持ちになっていたのではないか。 しかし来春になれば話は別。尊大なやンキースを再び嫌うことに躊躇はいらない。ヤンキースが嫌われる理由の第一は、日本のどこかの球団と一緒で「金満球団」だからである。年俸総額は全球団中ナンバーワン、五人の選手は年俸十億円を越えている(野手ではジーター、ウィリアムズ、投手ではクレメンス、ムシーナ、リベラ)。何とこの五人のサラリーで、年俸総額が最も少ないミネソタ・ツインズの全選手のサラリーを凌駕してしまうのである。 プレーオフに進出した八チームのうち、六球団は年俸総額のベスト8に入っており、現在のメジャーリーグの勝利の方程式はズバリ「投資せよ、されば報われん」。

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