企業情報独占を狙う「株式会社東証」

執筆者:石山新平2001年11月号

株式会社になったはずなのに、公的性格をカサに「企業情報の独占化」に乗り出した東証。市場規制の担い手かつ一民間企業という矛盾は、ますます拡大しつつあるが……。 これまでは会員証券会社の集まりとして運営されてきた東京証券取引所が、十一月一日、株式会社に生まれ変わった。理事長には代々大蔵省の大物OBを迎え、証券行政を管掌する役所の手足として様々な市場規制を担ってきた東証だが、ここ数年、最も力を注いできたのは上場企業のディスクロージャー(情報開示)の徹底である。 つまり東証は事実上、証券取引等監視委員会の果たすべき役割を肩代わりしてきた。上場企業の情報開示の強化は不可欠だが、民間の一株式会社となった東証がそれを担いつづけると、おかしな事態も生じてくる……。もっとも鬱陶しい存在「新聞に内部情報が先に出るというのは情報管理に問題があるのではないか」――。 ある中堅電機メーカーA社の広報部に、東京証券取引所の担当者から電話が入った。東証上場部は、このところ上場企業の広報担当者の間で「もっとも鬱陶しい存在」と言われている。新聞に何かニュースが載ると、決まって真偽を確かめる電話がかかってくるからだ。A社の場合も、この日の朝刊に「大幅な赤字に転落する」という決算見通しの記事が載っていた。「もし赤字になるのなら、すみやかに予想数値をTDネットで流して下さい」。東証の担当者は高圧的にこう迫ったという。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。