橋本大二郎「十年目の苦悩」

執筆者:山岡隆彦2001年12月号

「改革派」のさきがけとして新たな地方自治の姿を示し続けてきた橋本高知県知事。しかし、赫々たる成果の陰で腐敗根絶はならなかった。橋本県政の十年を検証する。 一九九一年十二月、縁もゆかりもない高知県の知事選に出馬した橋本大二郎は自民党公認候補の副知事に圧勝した。ちょうど十年前の出来事である。旧来の官僚政治打破を訴えての当選。NHKのキャスターからの転身で爽やかな風貌と弁舌、さらには後に首相にまで登りつめる橋本龍太郎の弟という毛並みのよさが注目度を実体以上に持ち上げたことは言うまでもない。マスコミは連日、橋本の言動を伝えた。 いまでこそ石原慎太郎や田中康夫など、知事の動静が全国ニュースで報道されることは珍しくないが、当時、目立った産業もない一県の知事が全国ニュースのみならずワイドショーまでも連日賑わしたのは全く異例の出来事だった。橋本の話題なら何でも中央に取り上げられる事態を、高知の記者たちは“大二郎神話”と呼んだ。 その後、各県での改革派知事誕生、小泉純一郎旋風に世間の耳目が集まり、当選直後のような熱気はない。それは一介の地方首長として必然のことであった。しかし、橋本は打ち上げた公約・政策を実行に移していった。

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