コンシグニアが苦しむ「自由競争の蹉跌」

執筆者:小西太2001年12月号

民営化から一年も経たず、イギリスの旧国営郵便コンシグニアの経営難が露呈した。高コストという“負の遺産”を抱え、世界進出の念願虚しく、かつての独占事業体は立ち腐れて行くのか。[ロンドン発]英国の郵便自由化が躓いた。二〇〇一年三月に株式会社化した旧英国郵便のコンシグニアは、四―九月期決算で二億八千万ポンド(約五百億円)の最終赤字を計上、黒字化のめどは立っていない。 国営セクターに効率性を導入する仕組みを探す――。日本の行政改革論議にも大きな影響を与えてきた英国の自由化・規制緩和の歴史は長い。その代表的政策として挙げられる一九八〇年代のサッチャリズムもさることながら、郵便事業について言えば郵便電気通信省から郵便・郵便振替・通信の三事業分野が公社として分離されたのは一九六九年にまでさかのぼる。 だが英国通信産業のフラッグシップ、ブリティッシュ・テレコム(BT)をはじめとして、鉄道施設管理会社のレールトラックや原子力発電の英国核燃料会社(BNFL)など、ここにきて国営セクターから民営化された企業が軒並み業績不振に陥ってしまっているのだ。自由化先進国の英国は今、“官業ビジネスの危機”とでも言うべき現象に苦しんでいる。

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