最大の焦点だった高齢者医療費の「伸び率管理制度」は事実上、骨抜きにされた。診療報酬を引き下げても、実は医師会のフトコロは殆ど痛まない。医療保険制度はこのまま破綻してしまうのか。「わたしの言う『三方一両損』の考え方は守られた」――来年度から実施される医療保険制度改革の大枠について、十一月二十九日夜に政府・与党の社会保障改革協議会が合意した際、小泉純一郎首相はこう発言して、会議を締めくくった。 しかし、その場に居合わせた協議会のメンバー全員が、首相の発言は強がりに過ぎず、合意した改革案が一方的な国民負担の増大でしかないことを知っていた。“聖域”なき構造改革を旗印に掲げる小泉政権をもってしても、わが国最強の政治的圧力団体、日本医師会の抵抗をはねのけることはできなかったのだ。政府案の三つのポイント 医療保険制度が現在、破綻の危機に瀕しているのは言うまでもない。国民の一年間の医療支出に相当する国民医療費は、一九九九年度の実績見込みで三十兆九千億円。このうち、七十歳以上が使った高齢者医療費は十一兆八千億円で、全体の約三八%を占める。バブル崩壊以降、国民所得は毎年、前年に比べて低下、あるいは横ばい状態にあるが、医療費はそんなことにはお構いなしに伸びている。

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