米軍からの情報によれば、北朝鮮の港を出た「不審船」は全部で三隻あった。果たしてその目的は――。どこにも語られていない情報入手の経緯と追跡の一部始終が、初めて明らかにされる。 昨年十二月二十二日、奄美大島沖の東シナ海で、海上保安庁の巡視船と交戦のすえ、北朝鮮のものと思われる不審船が沈没した。事件には依然として不明な点が多いが、中でも最大の謎は不審船がいかなる「任務」を帯びていたかである。これについて防衛庁は、覚醒剤や武器の密輸、あるいは工作員の上陸や回収作戦ではなく、特別な軍事作戦に従事していたのではないかと見て、警戒を強めている。 その特別な軍事作戦とは、東シナ海における日本のシーレーン(海上航路帯)の状況偵察や防衛体制の確認であり、防衛庁は、さまざまな状況証拠から、その可能性が高いとの判断を固めつつある。 東シナ海のシーレーンは、中東からの石油を積んだタンカーや東南アジア方面に向かう貨物船が頻繁に航行する、日本にとっての生命線。そこでの防衛に、日本がどう取り組もうとしているのか、さらには法改正によって船体射撃などの強硬手段が可能となった海上保安庁が、どういう手順で、どこまでやってくるのか――こうしたことを実地に調査することが不審船の任務に含まれていたのではないかと防衛庁は見ているのだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。