「大きすぎて潰せない企業」はこの国から消えた。力を失った金融では、もう潰すも潰さぬも選べないのだ。巨大な企業が倒れる――そんな“あり得ない話”を常識とする以外に、迷走する日本に還る場所はない。 首相官邸周辺では、昨年末あたりから「金融危機対応会議」という言葉が頻繁に聞かれるようになった。この「会議」は昨年四月施行の改正預金保険法の百二条に盛り込まれたもので、金融システム危機に陥る恐れがある時に、政府が十五兆円の公的資金枠、金融危機対応勘定を用意し、対象となる金融機関に資本注入などの実施を決定する機関だ。メンバーは首相のほか官房長官、金融担当相、金融庁長官、財務相、日銀総裁の六人。「この会議が開催される時、日本経済は最悪の事態を迎えている」(都銀首脳)。事実上の日本経済の非常事態宣言だ。 金融機関が危機的状況に追い込まれるのは、大型倒産で貸出金の回収が不能になり、資産が大きく目減りして信用を維持できなくなった時である。「資産売却、債権放棄、債務の株式化(デット・エクイティ・スワップ)、分社化、外資買収、減資、なんでもあり。ダイエー倒産を防ぐ手なら、すべて検討に値する」。一月上旬、ダイエーのメーンバンク幹部は、なりふりかまわぬ支援策の検討に入る方針を明らかにした。昨年十二月中旬にはダイエーの株価は六十円台にまで低下。青木建設の経営破綻などで信用リスクに敏感になった株式市場では、額面(五十円)割れに追い込まれてしまう――。

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