「監査の世界統一機関」誕生を注視せよ

執筆者:石山新平2002年1月号

その組織とは「国際監査基準理事会」。統一化された会計基準をもとに、監査の実践面にまで口を挟んでくることが確実。毎度ながら後手に回る日本には、全く備えがない。 二〇〇二年一月、専門家が集まる一つの国際組織がひっそりとスタートした。日本の新聞ではほとんど報じられず、国内ではごく一部の専門家たちがその組織の誕生を訝しげに眺めているだけだった。数年後にはグローバル化が進む資本市場の中で、とてつもなく大きな影響力を持ち、日本の市場や企業を大きく揺さぶる存在になるのは、ほぼ間違いないのだが、当事者たちはあえて目をそむけているようにさえ見える。 International Auditing and Assurance Standards Board(IAASB)がその組織だ。 日本語では「国際監査基準理事会」とでも訳そうか。「監査」とは、企業の決算書が企業の実態を正確に表しているかどうかを、審査し保証する仕組みだ。世界中から投資家の資金を集める株式上場企業は、この「監査」を受けることが世界共通のルールになっている。 会計事務所(監査法人)が監査をする際の基準を世界的に統一しようというのが、新組織IAASBの目的だ。連結決算や時価会計を義務付ける「会計ビッグバン」を日本に迫ることになった「国際会計基準理事会」(IASB)は、その兄弟組織と言ってもよい。企業の行動を決めるビジネス上のルールである会計の世界基準をIASBで決め、それに従っているかどうかをチェックする監査の世界基準をIAASBで決める。この二つの組織は、いわばグローバル化へ向かって突き進む資本市場という車の両輪なのだ。

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