目指すは「薀蓄オヤジ」

執筆者:成毛眞2002年1月号

 趣味としてのスキューバダイビングは十年ほど前からだ。織田裕二・原田知世主演の「彼女が水着にきがえたら」という映画を見ただけで、お気楽にも始めたのだ。映画は若いトレジャーハンターと女性ダイバーのラブロマンス。いわゆるバブル期のホイチョイ物である。 北海道生まれの僕はそれまで、ダイビングどころか海水浴すら数えるくらいしか行ったことがなかった。ましてスキューバなど、ウニ取り漁師の特技ぐらいにしか認識していなかった。暗い北の海、おどろおどろしい装飾の魚、家の高さほどもあるコンブの森、苦しい呼吸のなか、家族のためにがんばるお父さん。「一人前になるまで十年はかかるべさ」。 ところが、映画の中ではどう考えても初心者の二人が暖かそうな真っ青な海の中でマウスピースをはずし、気持ちよさそうにキスまでしているではないか。こりゃ簡単なスポーツだわと、家内と二人でとりあえずダイビングショップにいってみた。もちろん、キスをするためではない。 ダイビングをするには資格が必要だ。この証明書を取るために学科と実地訓練を四日間うけることになる。まず初めは楽チンなプール実習。溺れそうになったらプールの栓を抜けば良いなどと言われながら、それなりにこなした。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。