「解放の闘士」アラファトの蹉跌

執筆者:立山良司2002年1月号

中東和平の流れをここまで悪化させたのは、軍服を脱げないアラファト議長の存在ではないのか。知られざるパレスチナ社会の権力構造と、想定しうる「アラファト後」を解き明かす。「アラブの不死鳥」と呼ばれ、数多くの危機を乗り越えてきたPLO(パレスチナ解放機構)のアラファト議長は今、きわめて厳しい状況にある。イスラエルと米国はかつてない強い圧力を同議長に加えている。物理的にも昨年末以来、ヨルダン川西岸の町ラマッラーに閉じ込められており、「ラマッラーの虜囚」状態だ。足元のパレスチナ人社会では若い世代を中心に批判が高まり、権力基盤にも亀裂が生じ始めている。中東和平プロセスが崩壊の危機に瀕する中、「アラファト後」をめぐる動きも現実味を帯びてきている。色あせる指導者への尊敬「今、我々が求めているのは新たな選挙であり、我々若い世代を意思決定プロセスに参加させることだ」 若手パレスチナ人指導者の一人マルワン・バルグーティは昨年末の「ファタハ」革命記念日の演説で、現在の指導部を痛烈に批判した。ファタハはアラファトが創設したゲリラ組織で、PLO内の最大派閥であり、今でもアラファト体制を支える骨格だ。その西岸の責任者バルグーティの発言はアラファトを直接批判したわけではないが、若い世代を中心とするパレスチナ民衆の強い不満を直截に表現している。

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