「小泉純一郎の密かな愉悦」

執筆者:名越健郎2002年1月号

 日本の1990年代は経済だけでなく、政治も「失われた10年」だった。米国のクリントン前大統領と渡り合った日本の首相は7人。かつて、物忘れのひどかったレーガン元大統領は、竹下登元首相との首脳会談前、「TAKE SHIT(A)」(こんちくしょう)と記憶して会談に臨んだという実話があるが、外国首脳がころころ変わる日本の首相の名前を覚えるのは難しい。クリントン前大統領とエリツィン前ロシア大統領が対談し、激動の90年代を回顧していた。 クリントン「ところで、あの時出てきた日本の首相は誰だったか。ミヤザワ、ホソカワ、ハシモト……」 エリツィン「アルベルト・フジモリだったと記憶している」 その点、小泉純一郎首相は、改革志向、高い人気、個性の強さで欧米首脳の間でも記憶に残る政治家である。世界で「コイズミ・ジョーク」が出始めたことも、知名度のバロメーターが上がっていることを示している。 ただし、日本経済はデフレ不況、失業、不良債権問題と低落の一途で、「コイズミ・リセッション」(小泉不況)ともいわれ始めた。小泉ジョークも日本の経済危機を反映したものばかりだ。 ブッシュ米大統領には、100人のシークレットサービスがいる。そのうち1人はテロリストだが、ブッシュ大統領はそれが誰か知らない。

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