ますます甘やかされる日本の経営者

執筆者:矢吹信2002年1月号

株主代表訴訟が「骨抜き」にされる一方、社外取締役の義務づけは見送られた。こんな商法改正では、「無能経営者」という不良債権の解消にはほど遠い。 日本企業は、経営効率の悪い経営者を追い出す自浄機能を欠いている。この仕組みは「コーポレート・ガバナンス」と呼ばれるもので、いわば資本主義の最低限の規律である。身内で固めた取締役会、盲腸のような存在の監査役、不透明な会計制度、経営側に取り込まれた企業内組合、出資・融資先企業の経営監視ができない銀行、物言わぬ株主……。結果を出せない経営者にとって、これほど居座りやすい環境はあるまい。 ところが、現実にはさらに経営者を甘やかしかねない制度が次々と作られつつある。昨年から今年にかけて、法制審議会や国会で審議されている、商法の見直しは要注意だ。社外取締役の義務づけに失敗 二〇〇二年通常国会に出される商法の改正法案は、法務大臣の諮問機関、法制審議会が二年をかけて検討してきた。改正の最大の狙いは、欧米企業と比べて低い日本企業の経営効率を高めること。その方策として法制審は昨年春、大手企業に対して社外取締役の起用を義務づける改正試案を公表、注目を集めた。社外取締役の義務づけは、法制審メンバーの商法学者が強硬に主張したもので、これに事務方の法務省幹部が乗り、改正試案に半ば強引に盛り込まれた。

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