「歴史認識」に縛られる中国のキリスト教徒

執筆者:立山良司2002年2月号

 二十世紀初頭の中国を描いたパール・バックの大作『大地』で、主人公の王元がキリスト教の宣教師をこんな風に表現している。「少年時代、軍官学校で教えられたところでは、宣教師は宗教を売りものにして外国へ行き、愚民をまどわして、何か秘密の目的で自分の宗派に引き入れるものだということであった」(大久保康雄訳)。 昨年末から今年初めにかけて、中国政府は非公認キリスト教関係者に対する摘発を強化した。昨年十二月には湖南省などで地下活動をする「華南教会」の創設者ら二人に死刑判決が宣告された。また、今年一月には香港在住の貿易商が聖書を持ち込んだなどの容疑で逮捕された。いずれも「邪教カルト」の活動を行なったためとされている。 現在の中国のキリスト教には異なる二つの流れがある。一つは中国政府公認組織で、カトリックは「中国天主教愛国会」、プロテスタントは「中国基督教協会」と呼ばれている。信者数は前者が五百万人、後者が一千万から一千五百万人とされている。一方、非公認組織は地下教会として信者が個人の家にひそかに集まり宗教活動をしているため、「家庭教会」(ハウス・チャーチ)とも呼ばれている。非公認の信者数はカトリックが一千万人、プロテスタントが三千万人いると推定されている。

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