「無資源国」シンガポールは隣国マレーシアと協定を結び、水供給を受けている。マレーシアとの間の二つの協定により、隣接するジョホール州から水一千ガロン当たり三マレーシア・セント(一円強に相当)で未処理水の供給を受けることになっているが、マレーシア側がこの価格設定が低すぎると不満を表明、決着がついていない。 マレーシア側の不満の背景には、ジョホール州からいったんシンガポールに供給された水をシンガポールが処理し、再び買い戻すという仕組みになっていることがある。したがってマレーシア側は、ジョホール州で水を処理した後にシンガポールに供給したい考えだが、シンガポール側の反応は芳しくない。 紛糾する水間題に対し、マレーシアでは「両国間の水供給問題が適切に解決されなければ、軍事紛争を呼び起こす恐れもある」(ザイニ・モハマッド・サイド元マレーシア軍中将)といった不穏な発言も目立ち始めている。シンガポールは昨年実施された総選挙で与党・人民行動党が圧勝し、内政は安泰のように映るが、対外的な環境は楽観を許さないものがある。争点が生命線の水だけに事は重大だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。