マレーシアのクアラルンプールにある国際海事局海賊情報センターは、昨年全世界で報告された海賊事件は三百三十五件で、うち九十一件がインドネシア海域で発生したとの報告書を発表した。 報告書は、インドネシア周辺海域が海賊の出没地帯であるとし、特にマラッカ海峡北のスマトラ島北部海域を「世界で最も危険な海域」と名指し。また、独立運動が続くアチェ特別州周辺海域では、独立組織「自由アチェ運動(GAM)」による海賊行為が多いとしているが、「GAMを装ったインドネシア治安当局の可能性もある」と踏み込んだ指摘をしている点が特に注目されている。 インドネシア政府は、海賊取り締まり強化を海軍や沿岸警備隊に指示しているが、マラッカ海峡周辺では海軍が金品と引換えに海賊の摘発を緩めるという構造が続いている。このためマレーシアとシンガポール両国の政府は、インドネシア政府に厳重な取り締まりを求めている。 これに対し、インドネシア政府は「海軍が海賊行為に加担しているかのような指摘は、政府や軍に対する誹謗中傷だ」と、逆にマレーシア、シンガポール当局との対決姿勢を強める始末だ。

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