生保の「死の行進」が止まらない

執筆者:滝澤拓2002年2月号

急展開から一転、一ページ目に戻ってしまった朝日生命・東京海上の合併ストーリー。その背景に浮かび上がるのは、生保を蝕む“銀行問題”という病魔の姿だ――。 東京海上火災保険との経営統合前倒しが一月末に白紙に戻って以後、大手生保の一角、朝日生命保険の漂流が止まらない。格付け会社による相次ぐ格下げ、契約者の解約ラッシュという荒波に操まれながらの漂流だ。 東京海上と朝日生命の合併ストーリーは、二〇〇〇年九月に開かれた一ページ目から昨年十一月に始まった第二章、そして先月の急展開まで、まるでサスペンスのようだった。なにしろこれまで一貫して登場人物の振る舞いに理屈がつかなかった。「戦略というよりも、将来への焦りが原動力になっていたのではないか」とは、ある金融業界関係者の弁。あるいは、渋沢栄一が貴族の資金を集めて設立した東京海上と、渋沢=古河財閥系の朝日生命という歴史背景を、急接近の裏事情として説明する向きもある。 しかし、いまやそんな話は死んだ子の歳を数えるように虚しい。「朝日生命の資産内容の劣化と、株主からの大反対に東京海上の経営陣が後ずさりした」(大手損保幹部)ことによる統合前倒しの中止で、朝日生命の将来は一気に闇に覆われてしまったからである。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。