中国の波乱要因「世代間ギャップ」

執筆者:藤田洋毅2002年2月号

党大会を今秋に控え、中南海の闘争が活発化している。しかし、焦点は指導部の交代問題ばかりではない。世代交代のみか政治改革の実行すら求める若手幹部たちの声が、日増しに大きくなりつつあるのだ。 五年に一度の共産党大会を秋に控えて、中国では政治談義が熱を帯びてきた。意見を戦わすのは長老たちばかりではない。春節(旧正月)を前にしたある日、党中央・国務院の四十代半ばの若手幹部たち数名も、地方政府から北京に出張してきた学生時代の同級生を囲み、幹部宿舎の一室で語り明かした。杯が進むにつれ、おのずと今年最大のイベント、第十六回党大会がらみの話になる。参加した一人によれば、「江沢民総書記の歴史的な位置付け」をめぐって、忌憚のない意見をぶつけ合ったという。 江沢民はこの八年間、経済ではトウ小平理論を掲げ続け、手法もトウの手法の微調整に過ぎなかった。一方で政治、特に党改革においては、「三つの代表論」を打ち出し、トウを“凌駕”した。二十年か三十年後、一党独裁の崩壊の日が訪れた時、「党の墓碑に最初の銘を刻んだのは実は江だった、と思い起こされるのではないか」という結論に、ほぼ全員が同意してお開きとなった。 彼ら若手幹部たちは、「党大会は思いきった世代交代を断行する千載一遇のチャンス」という点でも一致した。トウ以来、党は幹部の若返りを組織路線の柱に据えている。しかも今回は、江や李鵬全国人民代表大会常務委員長らソ連・東欧留学組の世代から、中国の「失われた世代」とされる文化大革命世代を一挙に飛び越え、改革・開放後に教育を受けた四十代半ば以下の若手が党や政府の要職に就く最初の大会になるからである。彼らの鼻息は荒い。

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