急ピッチで進む円安に、通貨切り下げが連鎖した九七年の再来を懸念する声があがっている。だが、折に触れて出される牽制発言とは裏腹に、各国政府や市場の関心は驚くほど低い。[香港発]円安が急ピッチで進んでいる。二月一日には一九九八年十月五日以来の円安・ドル高水準となる一ドル=一三五円台まで下落した。三月決算期末を控え、日本の機関投資家の外貨建て資産売却に伴うドル売り・円買いの動きが予想されるため目先円安は一服するとの見方が多いが、「中長期的には円安が避けられない」との点に異論は少なく、年末には一四〇―一五〇円の円安を予想する声も出ている。「九七年のアジア通貨危機の再来か」。このまま円安が進んで行けば、今後他のアジア通貨も巻き込んで通貨切り下げが連鎖する――。当然そんな連想も働くだろう。しかし、市場ではその可能性に言及する声は驚くほど少ない。今回の円安が産業空洞化や金融システム不安の再発といった日本固有の問題に端を発していることに加え、アジア経済に対する円安の影響度が当時に比べると格段に低下していることが背景にあるからだ。改善されたバランスシート アジア各国・地域政府関係者が上げる円安懸念の声も、本音とは必ずしも一致しないはずだ。「アジア通貨危機の際と比べると、今回は円安に対する中国政府の反応は極めて鈍い」。中国の政府・金融当局とも頻繁に意見を交換するある日銀関係者はこう漏らす。

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