中南米経済の「隠された現実」

執筆者:2002年2月号

アルゼンチン危機の波もかぶらず、順調に世界の資金を集めているブラジル、メキシコ。その活況が、運用難に苦しむ先進国マネーの作った虚像だとしたら……。[ブエノスアイレス発]経済低迷が続いていたアルゼンチンは昨年末の暴動をきっかけにしたデラルア政権の崩壊により、対外債務の支払い停止、固定相場制の廃止へと追いこまれた。二十世紀初頭には穀物輸出で世界有数の富裕国となり、九〇年代前半には公営企業の民営化などで外資の誘致にも成功した南米の優等生がなぜ、未曾有の危機に陥ったのか。 国際通貨基金(IMF)のケーラー専務理事が一月下旬に仏有力紙ルモンドとのインタビューで明かした見解は、危機の本質を鋭く突いている。同国は通貨ペソをドルと一対一で固定したうえで外貨準備高の範囲内に現金流通量を抑える制度を九一年に導入。ケーラー氏は「この制度の維持には財政均衡が不可欠なのに、我々は当時のメネム政権にそれを強く求めなかった。これは明らかに誤りだった」と認めた。 このスキームは財政均衡を伴わない場合、効果はマイナスに働く。通貨流通量を外貨準備高以内に制限しているため、通貨増発による財政赤字の穴埋めは不可能であり、国債発行を続ける必要に迫られるからだ。ケーラー氏は「アルゼンチンの債務が急増していることに対し、IMFのエコノミストらは再三警鐘を鳴らしていた。だが、国際金融界ではメネム大統領の成功でユーフォリア(陶酔)が支配しており、そんな警告に耳を貸すものはいなかった」と振り返っている。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。