干上がる株式市場でケンカする人々

執筆者:滝澤拓2002年4月号

「台湾株式市場の売買代金 東京に迫る勢い」(日本経済新聞二月十三日付)――。日本の株式市場に空洞化の危険が高まっている。経済の低迷で上場株式の値上がりが見込めないという事情が、投資資金にそっぽを向かれるそもそもの背景だ。ただ、おカネの行き来を取り持つ証券会社にしてみれば、話は“そもそも論”では収まらない。このままでは食い扶持が稼げなくなってしまうではないか。 そんな干上がりつつある市場の水面下が、にわかに騒々しくなってきた。「東証はいったい何を考えているんだ」。怒りを募らせているのは、「やはり」と言うべきか証券会社である。それも、元来システム投資への出資などで東京証券取引所を支えてきたという自負のある大手、準大手証券だ。 きっかけは、東証が会員証券会社ごとの売買手口の公開に色気を見せたこと。ある大手証券幹部は「手口など公開すれば、東京市場から機関投資家は逃げていく」と言葉を荒らげる。実際、生保や信託銀行などの機関投資家は警戒を強めている。機関投資家の運用担当者は「証券会社の売買手口が表に出れば、その先にいる我々が何を買ったのかが推測される。これは投資行為としてデメリットだ」という。 東証が手口情報の外部提供に色気を出したのは初めてではない。「東証は四年ほど前にも我々に打診してきた」と大手証券幹部は振り返る。そのときは大手証券などの猛反対に屈する格好で東証が引き下がった。今回が四年前と違うのは、「東証vs証券会社」のケンカに見える軋轢が、根は「大手、準大手証券vsネット専業証券」のケンカでもある点だ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。