小泉政権を見つめる米国の本音

執筆者:2002年4月号

期待が大きかっただけに、不良債権の抜本処理に踏み出さない小泉政権への失望はより大きい。米国にとっての「対中牽制カード」にすらならなくなったら、ワシントンの視界から「日本経済」は消え果てる。[ワシントン発]一月下旬。二月八、九の両日にカナダのオタワで開かれることが決まっていた主要先進七カ国(G7)蔵相・中央銀行総裁会議の打ち合わせのため、各国の財務省、中央銀行の国際担当幹部が顔をそろえた席でのこと。「なぜ、ダイエーを救済したのか?」 日本側出席者は米側出席者からこう聞かれたという。政府と銀行が一体となってダイエーの救済を決めたのは一月十八日。この直後に、米国ではダイエーに良く似た存在であるKマートが連邦破産法を申請し、倒産している。経営が行き詰まった企業が潰れるのは市場原理から見て当然とする米国にとって、「ダイエー救済」は昔の護送船団行政への先祖返りに映ったのだ。 九八年にロング・ターム・キャピタル・マネジメント(LTCM)をFRB、財務省主導で救済し、厳しい政権批判を経験した米国は、政権とのつながりの深さではLTCMの比ではないエンロンの破綻をも容認している。一小売業者に過ぎない「DAIEI」の名がワシントンで急速に広がったという事実は、米ホワイトハウス、財務省などで小泉政権の改革路線への疑念が高まり始めたことを象徴していた。

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