デフレに勝つ「カテゴリーブランド戦略」

執筆者:五島太郎2002年5月号

“誰がつくっても変わらない”製品が溢れる時代、優良な企業ブランドがかえって市場開拓の足かせになることもある。「SCION」「VAIO」「化粧惑星」……ニーズ重視のブランド戦略の時代が始まっている。「トヨタはいよいよ本気で、クライスラーを追い抜きに来た」。三月初め、トヨタ自動車が発表した北米市場向け新ブランド、「SCION(サイオン)」の投入を自動車業界専門家はこう読む。トヨタは昨年、米国市場で販売シェアを初めて一〇%台にのせ、ビッグスリーの一角であるダイムラー・クライスラーを射程距離にとらえた。「御曹司」を意味する新ブランドは、カローラ、カムリなど大衆車を販売する「TOYOTA」、高級車レクサス(日本名セルシオ)を販売する「LEXUS」に次ぐ第三のブランド。トヨタの弱点とされてきた若者向け市場を開拓し、「トヨタをビッグスリーに押し上げるブースター(推進力)になる」と関係者は期待する。 北米でのトヨタ、ホンダなど日本メーカーの躍進はもちろん性能、商品企画の良さにあるが、意外に知られていない成功の秘密にブランド戦略の巧みさがある。日本では「セルシオ」はトヨタの最高級ラインナップだが、米国では「LEXUS」ブランドにトヨタの文字はない。ホンダも「レジェンド」は「ACURA」ブランドで販売しており、ホンダとは切り離している。激戦の高級車市場でBMW、メルセデス、ジャガーなど訴求力のあるブランドと戦うには、トヨタ、ホンダの持つ大衆車のイメージを払拭する必要があるからだ。

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