個人と個人が匿名で物品を売買するインターネットオークション(競売)。この生まれてまもない小さな業界が、霞が関に大きな課題を突き付けている。インターネットという新大陸を巡る省庁間の争いの火蓋を切っただけでなく、現在の経済産業省が抱える限界点を白日の下にさらすことになったのだ。独走した警察庁 きっかけは警察庁が構想したネット競売業界に対する法規制だった。ネット競売はあらゆる個人に匿名で商品を売りさばく場を提供するビジネス。それだけに、構造上トラブルが起こりやすい。そこで警察庁は古物商を対象とした「古物営業法」を使い、ネット競売業者を警察庁の監督下に置くことを考えた。古物商は美術品などの盗品が持ち込まれる可能性が高いため、営業は警察庁による許認可制となっており、取引の報告など様々な義務が課せられている。ネット競売業者にも同じ枠組みを適用すれば、盗品などに目を光らせる態勢が敷きやすい。 水面下で着々と根回しを進めた警察庁は、二月上旬、「ネット競売事業の届出制」や「盗品売買の報告」「取引記録のログ保存」「優良業者の認定制度」などを柱とする古物営業法改正案を今国会に提出することを発表した。 驚いたのが経済産業省だ。ネットバブルが崩壊したとはいえ、ネット業界が今後の経済成長の牽引役であることに変りはない。米国では競売最大手のイーベイはネット業界最大の勝ち組といわれており、競売事業はネットビジネスの花形でもある。また、世界的にネット事業は「自由かつ自己責任」が大原則。そこに日本だけ厳しい法規制を持ち込めば、グローバルな競争のなかで日本のネット産業の足かせとなることは間違いない。かつて同様の規制が検討されたニュージーランドでは、パブリックコメントで広く国民の意見を募った結果、反対意見が多かったことから規制の導入は先延ばしとなっている。

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