この三月、世界最大の金融企業、米シティグループの経営陣が来日した。サンフォード・ワイル会長・CEO、ロバート・ルービン取締役・経営執行委員会会長という超大物が東京に揃ったのだ。 だが、日本のマスメディアの報道はきわめて控えめで、三月二十日にホテルオークラで開かれた記者会見についても、新聞各紙は短く報じるのみ。クリントン政権の財務長官として勇名を馳せたルービン氏が小泉首相と会談し、日本の金融システム改革のスピードに注文をつけたり、インフレ率目標の設定を迫ったりする図が多少取り上げられる程度だった。 今回の来日のお題目は、シティグループの日本進出百周年記念。だが彼らは、実質二日程度の滞日中、日本側の関係者が「芸術的」とまで評するほど込み入ったアポイントメントを次々にこなしていた。その大部分が日本の金融企業の買収交渉だったのではというのが、もっぱらの見方だ。 傍証には事欠かない。ワイル、ルービンの両氏に同行したデリック・モーン副会長はグループのM&A(合併・買収)の責任者。シティがメディア関係者に配布した資料のなかにはグループ外の米系証券会社、モルガン・スタンレーのアナリストによるリポートがあり、そこでは日本でのM&Aの活発化が露骨に語られていた。

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