世界十カ国、四千四百店を抱える流通企業、米ウォルマートが大手スーパー・西友と資本提携し、日本に上陸する。消費不況、業界再編で大揺れする日本の流通業界を、一層突き動かす勢力になることは間違いない。だがウォルマートには、優秀なエンジニアを抱え自社システムの大半を開発してしまう「隠れた巨大IT(情報技術)企業」という顔もある。日本進出の背景には、ITシステムを武器に流通、メーカー、物流を牛耳る遠謀がほのみえる。 創業者サム・ウォルトンの没後十年にあたる二〇〇二年は、同社にとって二つの大イベントで始まった。二月に発表した二〇〇一年度決算の売上高が二千百七十八億ドル(前年度比一三・八%増)を達成、石油メジャーのエクソン・モービルを抜いて「世界最大の企業」の座についた。もう一つは長年の仇敵だった米流通第二位のKマートが米連邦破産法十一条を申請し、経営破綻したことだ。 ウォルマートがKマートに勝った理由の一つは、間違いなくIT戦略にあった。ウォルマートも四十年前の創業時は「Kマートの出来の悪い真似」と揶揄された安売りショップ。だが、Kマートが「非効率」を理由に人口五万人以下の都市には出店しなかったのに対し、ウォルマートは五千人の町でも店を構え、短期間で全国展開を成し遂げた。ITの効用を最大限生かした革新的な経営手法が、この成長を支えたのである。

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