[ロンドン発]「クレジットデリバティブ」――。欧米の金融当局が今、最も注目している金融取引だ。基本的な仕組みは簡単。融資の出し手や債券の保有者がデフォルト(債務不履行)に備えて保険料を支払い損失補償の契約を交わす取引で、一種の信用保険と思えば良い。九〇年代半ばに始まり、今では想定元本ベースの市場規模が一兆ドルと、五年前の四十倍に急拡大している。 金融当局が注視する理由は二つ。一つは、この取引で「日本リスク」が分かるからだ。日立〇・八七%、富士通一・五五%、東芝一・七〇%……。これらの数字は、債権者がそれぞれの企業のデフォルトに備えてクレジットデリバティブ取引をする際に支払う保険料(デフォルトスワップレート)を示し、この率が高いほど信用不安が大きい。前出の企業では昨年春に比べ、いずれも五倍前後に急騰しており、市場での売買高も増えている。日本を代表する優良企業も、金融のプロが破綻リスクを冷徹に見極める市場では“赤丸急上昇組”に属している。 従来は欧米企業が中心だった市場で日本企業が突如、活発に売買され始めた事実は、関係者を不安に陥れている。この保険料の動向が、企業の資金繰りを苦しくする事例は珍しくないからだ。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。