韓国の林東源大統領特使は四月三日から六日まで訪朝し、南北の鉄道・道路の連結や離散家族再会、経済協力推進などで合意、関係を修復させた。北朝鮮の金正日総書記はプリチャード米朝鮮半島和平担当特使の訪朝を受け入れる用意を表明し、日朝赤十字会談開催なども確認した。ブッシュ政権発足以来、その対北強硬政策の前に「引きこもり」を決め込んでいた北朝鮮が、ようやく外部へ打って出る姿勢を示した形だ。 しかし、これで展望が開けたわけではない。今回の合意は東部の鉄道・道路の連結事業以外はすでに合意しながら中断していた事項の再開を確認したに過ぎない。北朝鮮としては、事実上年末の大統領選挙までしか任期のない韓国の金大中政権を最大限に利用して実利を引き出そうとの戦術だ。一方には、南北関係改善の演出で、日米韓三国の対北朝鮮政策の温度差を際立たせ、米国の対北包囲網を打破しようという思惑もある。 プリチャード特使は訪韓し、五月中にも訪朝したいとの意向を表明した。しかし、北朝鮮外務省スポークスマンは、四月十一日、米朝対話の必要性を強調しつつも、「まだ環境が整っていない」と述べ、対話再開の前に環境整備が必要と注文をつけた。 日本にしても日朝赤十字会談の開催は見込まれるものの、会談で何らかの前進を期待することは難しい。むしろ、有本恵子さんのケースなど拉致疑惑をめぐり、今後、激しい攻防が予想される。

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