それでも続く政権と財閥の危うい関係

執筆者:黒田勝弘2002年6月号

経済改革が劇的に進んだとはいえ、それでも政権の意図に左右される韓国企業。政権交代で浮かぶ財閥・沈む財閥が出てくるのは、今も変わらない。[ソウル発]韓国での「政権と財閥」の関係をめぐっては象徴的な話がある。永らく韓国最大の財閥だった「現代」グループの創業者で、亡き鄭周永名誉会長が一九九二年の大統領選に出馬したときのことだ。一代で世界的な企業グループを築き上げ、当時すでに立志伝中の人物だった鄭周永が、何がもの足りなくて大統領を目指すのか、周囲は訝った。 ところが鄭周永の答えは「財閥(経済)では成功したけれど、その味はやはり政権(政治)の味には及ばない」というものだった。政治にコントロールされる財閥にはもう飽きた、財閥をコントロールできる政治の側に立ってみたい。鄭周永は、人生で唯一、味わわずに残されていた政治的権力を、一度味わってみたくてたまらなかったのだ。逆に言えば、「現代」といえどもそれだけ歴代政権には弱かったということである。「政権と企業」の関係を表す例をもう一つ挙げてみよう。盧泰愚政権(一九八八―九三年)下で市中銀行として設立された「同和銀行」。この銀行は北朝鮮出身者たちの出資で一九八九年に誕生した。北からの避難民としてスタートした出資者たちにとっては念願の銀行で、大統領選での盧泰愚支持の論功行賞として盧政権によって認可された。

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