官僚は保身に汲々とするなかれ。守るべきは国益であり、示すべきは未来へのビジョンだ。さもなくば国は滅びる――「外務省を真に改革する有志の会」を名乗る若手外交官グループから編集部に届いた一文は、こう檄を飛ばしている。川口外務大臣、外務省幹部よ、内なる声を聞け。ここには荒削りだが間違いなく改革の目指すべき志がある。 外務省スキャンダルの炎は、昨年一月、五億円余の官房機密費を詐取した松尾克俊・元要人外国訪問支援室長の事件で火がつき、田中真紀子前外相と鈴木宗男衆院議員という二人の特異なパーソナリティーを巻き込み燃え盛った。金銭スキャンダルに続き、政治家と外交官が結託して領土という日本の根本的国益を破壊していたことも発覚。外務省は清廉さのみでなく国益を保護する良心と能力も失っていたことが明らかとなり、国民の信頼は地に堕ちた。田中外相の更迭後の二月十二日、川口順子外相は十項目の外務省改革案を示したものの、鈴木氏の行政府への異常な介入が国民の目を外務省から逸らし、現時点で国民の関心は次々と発覚した国会議員のスキャンダルに向けられている。 川口外相は「外務省を変える会」(編集部注・十項目の改革案を具体化する第三者機関)を発足させ、改革に乗り出す姿勢を示している。川口外相と竹内行夫事務次官には鈴木氏の影響力を排除する決意が見受けられることは大いに評価したい。しかし、実は一連のスキャンダルで明らかになった問題点は全く解決されておらず、目を離せば、いつのまにか組織防衛を目的として既得権益が維持されてしまう恐れがある。また「変える会」が機能せず、改革が形式的なものになる可能性が高いことも強く危惧される。官僚はディテールを操作することにより、改革の精神を骨抜きにし、既得権益を維持しようとする。これは筆者らが外務官僚だからこそ断言できる事実である。

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