ペルーのトレド政権が七月に政権発足以来最大の危機を迎えるとの観測が強まっている。危機説の根拠は、政権の要であるクチンスキー経済財政相をめぐって閣内の亀裂が深まっていること。リマの消息筋によれば、同相の推進する国営企業の民営化計画や国際通貨基金(IMF)寄りの緊縮政策をめぐり、他の閣僚との対立がエスカレートしているという。 クチンスキー氏は「実力派の経済エキスパート」(外交筋)とされ、トレド大統領が新政権の“目玉”として経済財政相に抜擢したが、最近では経済運営の主導権をめぐって大統領との間にも軋轢が生じているようだ。同筋は「大統領は政権発足一周年に当たる七月二十八日の独立記念日を機に同経済財政相を更迭する方向に傾いている」と指摘する。 しかし、クチンスキー氏に代わる有力な人材に乏しいうえ、米国をはじめ外国政府や国際金融界に顔の利く同氏が閣外に去れば「対ペルー投資や融資が激減する恐れが強い」とされる。マスコミや野党勢力からも「クチンスキー辞任」要求の声が高まる中、トレド大統領にとって七月危機説は次第に現実味を帯びつつある。

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