イスラム世界がみた9.11テロ

執筆者:立山良司2002年6月号

「私は米国の崩壊を神に祈る」――同時多発テロ事件の“二十番目の乗っ取り犯”といわれるザカリア・ムサーウィは、四月下旬の公判でこう陳述した。フランス国籍のイスラム教徒ムサーウィは米国の航空学校に通っていたが、不審に思った学校側の通報で事件前の八月、FBI(連邦捜査局)に逮捕された。本人は事件との関わりを全面的に否定しているが、公判での陳述は米国に対する憎悪にあふれていた。 イスラム世界は同時多発テロ事件やアフガニスタンに対する米国の軍事攻撃、さらには欧米の価値観をどのように捉えているのだろうか。米世論調査会社ギャラップが昨年十二月から今年一月にかけて、アラブ五、非アラブ四の計九カ国のイスラム教徒約一万人を対象に行なったインタビューによる意識調査の結果は、欧米社会とイスラム社会の間に横たわるパーセプション・ギャップの大きさを改めて浮き彫りにしている。 同時多発テロ事件の行為そのものについては六七%が「正当化できない」と回答し、「できる」をはるかに上回っている。ただ、米国と対立関係にあるイランではなく、湾岸戦争で米軍に解放されたクウェートで「正当化できない」と「できる」がほぼ拮抗している点は理解に苦しむ。

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