惜別の歌もうたわれず消えていった興銀

執筆者:喜文康隆2002年6月号

「次の世代のために計画を立てる場合、美徳は相続されないということを忘れてはならない」(『コモンセンス』トマス・ペイン)     * 日本興業銀行の最後の頭取・西村正雄は、自ら確信犯でドン・キホーテを演じているのだろうか。 四月一日の「みずほフィナンシャルグループ」の統合初日から起きたコンピュータシステムの統合をめぐるトラブルは、おそらく日本の銀行史に残る事件になるだろう。 対応をあやまれば、みずほフィナンシャルグループは、預金者、法人企業を含めた顧客離れによって、緩やかな死への途をたどる。少なくとも株価はそう告げている。 仮にそうはならなくとも、西村が自画自賛していた「みずほ銀行」と「みずほコーポレート銀行」とに分けたグループの仕組みが、ゼロから見直しを迫られることは間違いない。 日本興業銀行は三月二十七日、日本経済新聞紙上に「創業一〇〇年 皆様の永年にわたるご愛顧、ご支援に心より感謝申しあげます」と告げるCI(コーポレート・アイデンティティ)広告なのか単なるお知らせなのか判別しかねる奇妙な全面広告を掲載した。みずほ銀行でシステム・トラブルが表面化したのはそれから一週間も経たずのこと。

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