情報や善意を交換しに今日も夜の街へ

執筆者:成毛眞2002年6月号

 仕事柄、いろいろな会社と付き合いがある。業種も、土木建設業からナノテクノロジー、農業から航空までと千差万別。投資会社といえども金融機関の端くれだから当然だ。ただし、我が社のように数十人の社員しかいない場合、必ずしも専門家がいるとは限らない。会社どころか産業すら知らずに投資するわけにはいかないから、何らかの方法で調査が必要になる。 一般的に調査は専門の機関や役所などのヒアリングから始めるのが普通だろうが、僕は新聞記者から始めるケースが多い。理由の第一は無料であること。おおむね記者は、会見や取材で人の話を聞いて朝から晩まで過ごしている。しかし、その出口は一編の記事だけだったりするので、鬱憤が溜まっていることが多い。締め切り後などの時間帯に彼らを襲えば、よろこんで情報を教えてくれる。 第二に新聞記者の多くは、若いくせに取材先の社長を良く知っている。まったく侮れない。経営者の記者に対する言動を聞くだけでも非常に参考になる。商品を売り込み続ける人、ひたすら警戒する人、思想家風情の人など客観的な事実を聞くだけで、出資という利害関係の絡む面談調査では得られない情報を手にすることが出来る。 しかし全く無料かというと、そうでもない。「情報という通貨」のやり取りが実際には発生しているからだ。この場合、こちらから差し出す情報が自社ネタではあとが続かないし、直接記事になるような他社情報ではまるで密告屋になってしまう。そこで、後日かれらがコラムに書けるようなエピソードを提供するのが筋ということになるが、ほとんどが馬鹿話のようになるのはご愛嬌。

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