米格付け会社ムーディーズが、米政府の横槍によりイラン国債の格付け停止に追い込まれた。ブッシュ政権はイランを「悪の枢軸国」と位置づけ、法律によって同国との経済取引規制も実施中。そんな国の国債に格付けを与え国際金融市場での資金調達の道を開くことは法律違反だとの“脅し”を米財務省がかけたとされているが、その圧力の正当性には関係者の間でも疑問の声が多い。 財務省に屈したことは、中立性が重視される格付け会社としての信用問題。ムーディーズは日本の財務省の反論にもかかわらず、日本国債の格下げを実施したばかり。それが自国の財務省の横槍には簡単に屈してしまったわけで、「ムーディーズは米国政府と一体」とする一部の見方が説得力を増したともいえる。 もっとも、イランは債券発行を予定どおり実施する方針で、これは革命以降初の外貨建て債券となる。格付けは欧州の資本が入った世界第三位の格付け会社、フィッチ社から得る見通し。引き受け幹事はドイツのコメルツ銀行で、ムーディーズの「腰抜けな対応」(金融関係者)により、中東関係の金融ビジネスで欧州系の存在感が一気に強まりそうな雲行きだ。

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