八百八十八億円の最終赤字――。五月十日、ソフトバンク二〇〇二年三月期決算は、九四年の株式公開以降、初めての赤字決算となった。国税庁が公表した二〇〇一年分の高額納税者番付でも、孫正義社長は昨年の三位から四十二位と大幅に順位を下げた。「IT化時代の寵児」ともてはやされた孫社長は、今やその高名も風前の灯となりつつある。 前年度決算の赤字はブロードバンド(高速大容量)通信事業のインフラを構築するための初期投資(八百七十五億円)や、光ファイバーの通信ベンチャー、グローバルクロッシングの破綻に伴う投資評価損(千百八十五億円)などが主因。米ヤフーやイー・トレードグループの株式など、前期だけでも千二百億円超の株式売却益を捻り出したが損失は埋まらなかった。 それでも、ひたすらハイテンションで押し通す“孫節”はまだ健在だ。「これからは攻勢に出る」。決算発表後に開かれた投資家説明会で、孫社長は赤字に転落した決算内容には目もくれず、「生涯で最も注力した」というブロードバンド戦略を一時間近くも熱っぽく語った。資金繰りに関しては「手元流動性(すぐにとり崩せる資金)も千六百億円以上あり、問題とされる社債の償還資金は余裕でカバーできる」と強調。さらには、株主資本と負債の割合を示すデット・エクイティ・レシオも「トヨタやソニーには及ばないが、NTTや富士通、三井物産より良好」とまで言ってのけた。

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