テレビゲームにハマった果てに

執筆者:成毛眞2002年7月号

 ここ十年のあいだで、テレビゲームにハマって会社を都合一カ月は休んだ。テレビゲームといっても格闘ゲームやレーシングゲームではない。それではいくらなんでも子供じみているというものだ。ハマっているのはRPGというタイプのもの。ロール・プレイング・ゲームの略で、そのひとつである「ドラクエ」という言葉を記憶している方も多いだろう。プレーヤーが主人公を操り、神話やメルヘンの世界を冒険するというものだ。 ゲームを一回終わらせるのには五十時間から百時間。主人公が生まれた町を離れ、次々にモンスターを倒しながら強く成長し、最後にラスト・ボスという悪の権化を倒すのにかかる時間だ。文字通り一日中戦っていても全体の四分の一も進まない。そこで、最低三日間は会社を休むことになる。 自分でも「なんてアホらしい」「四十になってまでやることか」「歳とってきて目が疲れやすくなった」「手が震える、喉が渇く」などとつぶやきながら、パジャマ姿のままでテレビに向かっていた。ところが、ここ数年はラストまでは遊ばない。さすがに恥ずかしくなったのと、もっと面白いRPGが見つかったからだ。 そのRPGとは、RPGを作っている会社の役員になることだ。ファイナルファンタジー・シリーズが僕のお気に入りだったこともあって、その制作会社であるスクウェアの社外取締役を一昨年に引き受けた。もちろん、新作を無償でいち早くいただけるという下心もあるのだが、会社経営自体も十分RPGの要素がある。

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