公的年金はすでに死んでいる

執筆者:2002年7月号

「世代間の助け合い」という理念は空洞化し、現役世代の負担ばかりが増え続ける。大甘の人口推計で国民を騙し続ける厚生労働省の戯れ言を信じたら、あなたの未来はない……。 五月十五日朝、自民党年金制度調査会の会合で、厚生労働省が配った資料に見入っていた同党議員たちから、一斉にため息が漏れた。 そこには、最新の人口推計を基に算出した年金財政の将来見通しが書かれていた。一人の女性が一生の間に生む子供の数の平均値、いわゆる合計特殊出生率が二〇〇〇年の一・三六を下回る一・一〇とした「低位推計」を取った場合、サラリーマンが加入する厚生年金の保険料率は、二〇二五年度に年収の二七・五%に達する。税や医療・介護保険料など他の負担もあるのに、年金保険料だけで収入の四分の一以上を持っていかれる計算になる。前回一九九九年度の年金制度改正では、二〇二五年度の保険料率を年収の二一・六%としていたが、それがいきなり三割近くアップ。「厚生年金保険料率を年収のおおむね二割程度に抑える」としていた政府公約も、わずか三年で反故にされた格好だ。 会合に出席した議員からは、「厚生(労働)省は次はどうやって国民を騙すんだ?」と罵声が飛んだ。公的年金制度の抜本改革が叫ばれて久しいが、結局は現役世代の負担をずるずる引き上げるだけの小手先の制度改正に終わっている。しかし、厚生労働省は厳しい現実を前にしながら、次の制度改正に向けたビジョンを何も示せていない。

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