市場を覆った「不信」と戦うブッシュ政権

執筆者:フォーサイト編集部2002年8月号

次々と明るみに出る不祥事は、「米国型資本主義」の終わりを告げているのだろうか。ITバブル崩壊のショックは間違いなく巨大。だが、米経済が「日本の二の舞」となるとは考えにくい。 ダイナジー、グローバル・クロッシング、タイコ・インターナショナル、ワールドコム……。エンロンに始まった不正会計疑惑などの不祥事が、米国の誇る“革新的企業”を次々と呑み込んで行く。 二〇〇〇年四月のITバブル崩壊以降、十一回にわたる利下げを行なったFRB(米連邦準備制度理事会)の金融政策と、対テロ戦争シフトの軍事支出が底支えしてきた米経済。その景気回復へのシナリオが大きく狂う可能性が高まってきた。五月末に一万ドルの大台を割ったニューヨーク・ダウはつるべ落としに下げ始め、今では二〇〇一年九月二十一日につけたテロ直後の最安値、八二三五・八一ドルにまで迫る勢いだ。「六カ月前、アメリカ社会にとって九・一一よりもエンロン・スキャンダルの方が大きなターニングポイントになると書いて、私はずいぶんと批判を浴びたものだ。今でもまだ、そんなことはあり得ないと言われるのだろうか?」――。六月二十八日付ニューヨーク・タイムズ紙に寄せたコラムの中で、ポール・クルーグマン・プリンストン大学教授はそう記している。同氏は当時、何にもまして高株価を追求してきた米国型資本主義が、これから自己否定を余儀なくされることになるだろうと見通していたのだ。

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