衛星打ち上げ事業の価格競争で欧州宇宙機関(ESA)のアリアン計画が危機に直面している。 事業会社の仏アリアンスペース社は、二〇〇〇年度は二億四千万ユーロ、昨年度は一億九千三百万ユーロの損失を出し、二年連続で赤字となった。しかも通信衛星を打ち上げる欧州の電気通信業界が経営危機に陥っているため、同社にとって状況は悪化するばかり。欧州委員会筋によると、アリアンスペースを維持するには、今後三年間で七億五千万ユーロの新たな資金投入が必要になるという。 経営悪化の最大の原因は、衛星ビジネスにおける米露の接近。ウクライナ、ロシア両国と協力する米ボーイング社は、海上プラットホームからの衛星打ち上げを、アリアンのほぼ半額で請け負っている。米ロッキード・マーチン社もロシアの協力を得て、低価格での衛星打ち上げを開始した。 これに対し、欧州側は警戒感を強め、「貴重な技術プログラムを守れ」とアリアンスペースの擁護に乗り出した。とはいえ、「アリアン5」ロケットの打ち上げ費用は一億九千万ユーロと、市場価格よりも八千万ユーロも高い。打てる手はないのが実状だ。

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