六月六日、東京都足立区に不法滞在していた中国人夫妻の長男が誘拐される事件が起きた。妊娠五カ月だった主犯格の中国人女が出産費用欲しさに知人ら六人を金で釣り、同じ福建省出身の被害者夫妻を標的にした事件だった。 通常、中国人同士と見られる誘拐事件で日本のマスコミが報道協定を結ぶことはないが、今回は人質が子供だったため異例の協定を締結、警視庁も緊張して捜査に当たった。ところが、事件の推移は捜査員を当惑させた。「被害者のお母さんが脅迫電話に対して『そんな大金はない』と怒鳴り返すなど、日本人とは全く違う態度をとるので面食らった。中国語で『もう少し下手に出て』と忠告しても聞き入れない。とうとう身代金の額を値切ってしまった」と警視庁の捜査員も驚く。 中国人女性の強さは被害者側だけではなかった。主犯の女は二十五歳という若さながら犯行グループを完全に仕切り、犯行直前に車が確保されていないことを知ると男たちを怒鳴り上げていたという。参考人聴取された同棲相手の中国人男性も、「別れたかったが怖くて言い出せなかった。これで別れられる」とホッとしていたとか。

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