米国経済の九〇年代を否定するかのように、次々と明るみに出てくるトップ企業の不祥事。“先進的コーポレートガバナンス”は、倫理観を失った経営者たちに、こうして骨抜きにされた――。[ニューヨーク発]資本主義経済のトッププレーヤーである「米国株式会社」への投資家の信頼が揺らいでいる。昨年十二月の米エネルギー卸売り最大手エンロンの経営破綻以来、米企業による不正会計疑惑などの不祥事が次々に表面化。強まる企業不信は米国外への資金流出を加速させ、急激なドル安進行とともに、米株式市場を極度の不振に陥れている。 昨年九月の同時テロで悪化した米経済は、今年一―三月期に実質六・一%の高成長を回復した。だが、企業不信の高まりに歩調を合わせるように、ドルは四月以降下げ足を速め、六月二十八日には対円で昨年九月下旬以来の安値となる一ドル=一一八円台前半まで急落。今年の最高値だった一月末の一三五円台からの下落率は約一三%に達した。対ユーロでも同日、一ユーロ=〇・九九九〇ドルと等価目前に迫り、日本政府・日銀の委託を受けてニューヨーク連銀と欧州中銀が円売り市場介入に踏み切る事態となった。 米株式市場でも、ハイテク株の代表的指標であるナスダック(店頭市場)総合指数が七月二日、終値で約五年ぶりに一四〇〇台を割り込んだ。年初来の下落率は三割を超える。優良株で構成されるダウ工業株三十種平均も同日、終値で九〇〇〇ドル割れ寸前まで値下がりし、年初来の下落率は一割以上に達した。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。